「壊死」というなにやら難しそうな言葉を使いました。

「壊死」というのは生体内の組織や細胞が死ぬことを意味します。

顎骨壊死というのは、顎の骨の一部または全てが壊死を起こすことを意味します。


さて、骨粗鬆症の薬にはビスフォスフォネート製剤があります。
当院に来院される患者さん達に処方されている薬で馴染みがあるのは「フォサマック」、「ボナロン」といった薬です。
まず、間違ってはならないのは、こういうお薬は、骨を丈夫にする薬ではないということです。
骨の代謝、即ち骨が新しく入れ替わる身体の正常な反応を阻害して、骨の密度を高くするお薬です。
ですので、内科とか整形外科とかで「骨密度が改善してきました。よかったですね〜。」と言われることがあっても、それは正常な状態に戻ってきたということを意味するものではありません。


問題なのは、こういったお薬を常用されている方々の歯科治療です。
薬局で薬をもらうときには必ず「歯科にかかる時には、この薬を飲んでいることを歯科医師に告げてくださいね。」と言われるはずです。
何故でしょう?

顎の骨はこの薬を他の部位の骨と比べて3.5〜10倍も吸収してしまいます。
つまり、この薬は顎の骨には極端に多く含まれることになります。
骨密度こそアップしていても、古くなって、本来なら入れ替わらなければならない骨が多量に残ってしまってます。
虫歯があったり歯周病があったりして歯を抜かなければならなくなってしまった場合、どうなるでしょう。

歯根は骨に囲まれてます。
この骨は正常な状態でしょうか?
ビスフォスフォネートを多量に含んだ骨ですね。
正常な骨ではありません。
さぁ、歯を抜きましょう。
骨にダメージが加わります。

いや、それ以前に細菌に感染してますから、かなりのダメージを食らった状態です。
正常な骨であれば抜歯してもその部位の骨は再生していきます。
が、代謝が阻害されてます。
簡単な表現を使って説明するのであれば、「ヘタってる」からとても活動できる状態ではなくなってしまっている場合があります。
すると、骨は壊死します。
もともと細菌感染があれば骨髄炎を起こしますね。
かなり痛いと思います。
炎症がひどい場合には熱も出ます。
たった一本の虫歯からえらい事になったりする場合があります。
そもそも、骨壊死というのは骨が正常な状態でも虫歯が原因で骨に感染が起こって骨髄炎に至った場合場合には起こりうる疾患です。

このようなひどい状態に陥るようなケースは、実際にはそれほど多くはありません。
当院でもビスフォスフォネートを服用していらっしゃる方の抜歯は何度か行なってますが、骨壊死を起こしたようなケースはありません。

しかし、世界のどこかでは起こっていることですから、我が身に降りかからないという保証はありません。
最近、介護認定審査の資料に、ビスフォスフォネートを服用し、歯の治療を受けてから顎骨壊死を起こしたという方の資料を見ました。

周南市でも起こってたんですよね〜、ひとごとじゃないですよ〜。

それならビスフォスフォネートを飲んでたら歯の治療はできないのかというと、そうではありません。
しかしビスフォスフォネートを服用していらっしゃる方の抜歯等、口の中の外科処置は、ビスフォスフォネートを三ヶ月ほど休薬して、処置が終わった後も三ヶ月ほど、あわせて六ヶ月の休薬が望ましいとされています。
骨密度が70%を下回るとビスフォスフォネートを処方されたりします。
高齢になると、何時そのような状況に追い込まれるかわわかりません。
ちょっとしたことで骨折して入院するよりは、この薬を飲んでおいたほうが賢明かとも思われます。
でも、歯や歯周組織の状態も、それなりになっていきます。

日頃から注意を怠らないように気を付けておくべきなんでしょう。
 

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昨年11月25日のゆるキャラグランプリで山口県のちょるるが2位になりました。
歯科医師会にもゆるキャラがいます。
 
日本歯科医師会のゆるキャラ「よ坊さん」


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市民講演会情報

2月17日(日)
 市民講演会
  「本当は怖い目の成人病」


場所:さくらホール(山口県周南総合庁舎2階)
講師:医療法人広田眼科 広田篤



もうすぐバレンタインデー
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