親鸞が範宴と呼ばれていた時、子供の背中にできた大きな紫色の腫れものの治療を体験した。
死に至らしめるような難病が加持祈祷で治せないと戸惑っており、一緒にいた法螺房は
「どのような教論にも腫れものを退治することである」と教えた。

範宴は、手巾で腫れものの周囲をぬぐった。
法螺房は「なにをやっておる」と叱声し、いきなりその腫れものに食らいついた。
紫色にふくれあがり、活火山のように赤い裂け目の見える巨大な腫れものに、口をあてて吸いついた。
膿を吸って地面に吐き捨てることを繰り返した。

「だがそれだけではだめだ。できものの奥の肉のあいだに、腫れものの芯が隠れている。
その肉の芽を吸い出してしまえば、二度どこの子に腫れものはできない。
どうだ、範宴、やってみるか、救世観音に祈るより、この子の腫れものを吸い出すことのほうが、よほど仏の心にかのうておる。どうじゃ」

範宴は、力の限り全身で吸った。
肉のはぜる音がして、熱い生きもののようなものが、喉をつたって一瞬にして胃の中にまで入り込んだ。


親鸞上人というと1173〜1262年、鎌倉時代前半から中期にかけて活躍されたお坊さんですね。
浄土真宗の宗祖です。
この時代に既に、根治療法の概念があったということです。
根治療法というのは、その疾患の根本にある原因を取り除く治療法です

例えば、風邪をひいた時にはみなさん風邪薬を服用します。
が、風邪ウイルスに効果はありません。
従って根治療法ではありません。
風邪の治療は身体の自然治癒力に依存してます、それを援護してくれるのが風邪薬です。

一方、我々が扱う虫歯や歯周病には自然治癒はありません。
虫歯であれば、原因菌や菌によって破壊された部分を取り除き、人工物で歯の形態を修復することが根治療法になります。
歯周病の場合には、歯周病菌を減らすことが最も重要です。